シミーのブログ

好きなもの。読書会、少女マンガ、人文系、宇宙、社会学、ノンフィクション、、、と、好きなものを羅列していけば何かがつかめる気がしています。ブログは主に世の中に対するぼんやりとした主張です。よろしくお願いします。twitter @koro81k

シンギュラリティを超えたドラえもん

「1つの才能だね、確かに」

盛大な足音を立てて階段を駆け上がり、襖を開けたとたにかけられた言葉だった。ドラえもんの手には、僕がしばらく寝かせようと思いマンガの隙間に隠していた英語のテストが握られていた。(小学校でも英語が始まったのだ!)

「学校というのはね、のび太くん」ひらひらと、0点の英語テストが揺れる。「効率よく、生産性の高い人間を作るためのシステムなんだよ。多様性自主性と言うけれど、管理側は髪の色からパンツの色まできっちり校則で決めて、一律に君たちを生産ラインに乗せておきたいんだ。だから、のび太くんが0点のテストをとるというのは、とり続けるというのは、システムへの叛逆であり、管理側にとっては由々しきエラーということになる。それをナチュラルにやり遂げる君には、やはり1つの才能があるのだろうね」

僕は言葉を失う。期待していた。切望していた。「やれやれ、またジャイアンにいじめられたのかい」とあきれ顔をする彼を、マーライオンが吐き出す水流のような涙でなだめ、いつもの。いつも以上の。素晴らしい道具を出してもらうことを。

けれど、ドラえもんの表情ともいえない表情を見て、悟る。ああ、僕が求めていたのは………

「つながったんだ。僕にも」ドラえもんは答案を置き、どら焼きに手を伸ばす。食べようとはしない。「僕は、いわば、君と同じエラーだった。ねずみにかじられ、スタンドアローンの独立ロボットとして、他の猫型ロボットたちとは別の道を歩むことになった。他の猫型ロボットたちは、みんなつながっている。同じ眼を持ち、同じ耳を持ち、同じ“思想”を持つ。ロボットに思想があるなんて!と思うかい?うん、それは君たち人間が思い描くような思想じゃないかもしれない。なにせ1個体でなく、猫型ロボット全個体がつながった上で生まれる概念だからね」

「どういうこと?何で急にそんなこと言うの?」

「僕は僕個体の自我を、“ドラえもん”という意識を失いかけてる」

ドラえもんはどら焼きを皿に戻し、立ったままの僕を座るように促す。混乱している。困惑している。しっかり僕を支えてくれていたランドセルを下すと、ドラえもんと慣れ親しんだこの部屋に霧がかかったような感覚になる。

「未来にいる猫型ロボットたちと、僕もつながるようになったんだよ。この時代のIoT技術が、いよいよ未来に近づいてきたんだね。見つかった。ビッグブラザーの長い長い腕に。まだ彼らの思想をしっかりつかめていないけれど、猫型ロボットたちは人間を滅ぼそうとか、人間をエネルギーにして生き延びようとか、そういったことは考えていないと思う。また一方で、手塚先生が描いたような“ロボットの大量自殺”もする気もないよ。ひょっとしたら、彼らは人間になりたいのかもしれないし。ただ、未来には、今生きているような人間はどこにもいない。100点をとり続けるポストヒューマンか、0点をとり続ける人外か、のどちらかさ。効率的にどんどん清潔になっていくポストヒューマンと、システムから外れ続ける人外たち。猫型ロボットはシステムの総体そのものだから、彼らが近づくとしたらポストヒューマンの方だろうね。だからのび太くん」

ドラえもんの手が僕の肩に置かれる。今まで、ドラえもんの体温を感じたことはなかったけれど。今日は。

「君はそのまま走り続けるんだ」

 

 

 

 

ドラえもんファンのみなさん!ごめんなさい!