シミーのブログ

好きなもの。読書会、少女マンガ、人文系、宇宙、社会学、ノンフィクション、、、と、好きなものを羅列していけば何かがつかめる気がしています。ブログは主に世の中に対するぼんやりとした主張です。よろしくお願いします。twitter @koro81k

『海獣の子供』 感動しすぎてもはや涙も出ない。

映画『海獣の子供』観てきた。もともと、五十嵐大介の原作マンガも好きだったのだけど、あの STUDIO4℃ が映像化すると聞いて、しかも6年かけてとなれば、観に行かざるを得ない。

 

原作マンガは世界中で起こる海洋奇譚や、海に関する神話・不思議を圧倒的な画力で描き、生命の根源、「人間(僕たち)はどこから来たのか」をテーマとした壮大なものだった。カギとなるのはジュゴンに育てられた二人の少年、ウミとソラである。映画は、1人の思春期の女の子ルカの、ひと夏の海洋浪漫ジュブナイルに落とし込んでいる。

 

ただねー、神話クラスの話を、「あんたの手のひらの物語」にしたもんで、もう密度が半端じゃなく、映画の間中、僕は放心状態だった。感動しすぎて涙も出なかった。

 

物語の冒頭、ルカが暮らす家の玄関には、イルカとカエルの置物がある。ルカ≒イルカは、陸上と海をつなぐものであって、その隣にカエルがあるので、ああ冒険をしてもちゃんと「帰ってくる」のだなと分かる。

 

マンハッタン沖にザトウクジラが出現するなど、ニュースごしに「海で何かが起こっている」感が出てくる。海洋学者のジムたちは、海の生き物が歌うSONGを研究し、追い続けてきた。人間は言葉によって他者に想いを伝えるけど、自然は、海は、SONGによってダイレクトに概念を伝えているのではないか。そんでその概念は、生命の誕生、宇宙の創生から、積み重なり折り重なった歴史そのものである。作中、鯨や魚たちがルカたちを明らかに「見る」ような眼の動きをしてるんだけども、「彼ら」はずっと見てきているわけだ、人類の誕生から、宇宙の誕生から、世界を。その海が、「誕生祭」をしようとしている。ウミとソラ、ルカは、その“祭”を目撃する。

 

んー。抽象度が高く説明しがたい。米津玄師が歌う『海の幽霊』の歌詞にもあるとおり、「大切なことは言葉にならない」ので、音楽・映像表現を直に体験いただくしかないのだけれども、言っていることはごくシンプルで、宇宙と人は同じ構成要素でできてる。海で行われる“祭”はすなわち、人間の誕生の瞬間そのものであり、宇宙の誕生それ自体である。

 

ともすれば陳腐になりがちなこのテーマを、何度でも言うけど圧倒的なビジュアルと音楽でみせるという。映画を観終わった後に夏が近づいた空とか見ると、世界の見え方が変わっているぐらいの衝撃。宇宙とか生命は、ずっと離れた彼方にあると「同時に」僕ら1人ひとりの人間の中にある。

 

まあね、ルカが起こす行動の動機がよく分からないとか、やたら登場人物の説明口調がやたら多いとか、【神話】を分かりやすくしようとしたんでちょっとそれ気になるという意見も分かります。でも僕は言いたい。

 

ありがとう。