シミーのブログ

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『アルキメデスの大戦』 天才数学者でも日本は救えない。

映画『アルキメデスの大戦』観てきた。

 

西の湯川・東の櫂、と称される百年に1人の天才・櫂直(かいただし)は、日本が戦争に突入する事態を阻止するため、巨大戦艦大和の「正確な見積」算定に挑む。映画は巨大戦艦大和が沈む場面から始まり、その戦艦大和建造会議にさかのぼる。根拠なき精神論で巨大戦艦を作ろうとする海軍の勢力は、建造費も不当に安く見積し、しかもその算定の根拠を「軍紀だから」という理由で提出しない。

 

そこで、山本五十六チームは、戦艦大和がいかに予算を喰うものか。数学の天才・櫂に計算させ、敵勢力を糾弾しようという作戦である。

 

こうした歴史系映画の難しさは、「史実の壁」を超えられるかにある。たとえば、ジャンヌ・ダルクが火刑になるのは史実である。どうしても変わらない。であれば、実は火刑になったのはジャンヌ・ダルクでなく、身代わりだった、とか、そうした別の解釈を入れることによって、史実に基づいたフィクションはカタストロフを迎えることができる。今回は、戦艦大和建造阻止、が主目的だけど、けっきょく戦艦大和は作られるし、しかも無残なカタチで沈没させられる史実が厳然としてある。

 

これをねー、でも、『アルキメデスの大戦』は、賛否両論あるけど、超えてきましたね。解釈で。その結論はぜひ、劇場で、というところはある。

 

んで、監督の山崎さん。オリンピック開会式の総合演出にも選ばれていたし、オールウェイズとか撮ってる人だから、失礼ながら、国策的な作品やる人なのかなぁと、観る前は思ってた。すんません。実際、蓋を開けてみると、原発とオリンピックと政権批判だった。

 

海軍の会議は、そもそも、今後の戦争が、日露戦争以来の巨艦巨砲主義を貫くのか、新型平気として登場してきた航空機の時代になるのか。そうした大戦略を練る場でもあった。でも実際は、個人の人格攻撃(どこそこの女といちゃつきやがって)や笑っちゃうくらい薄っぺらな精神論(武威を示すべし!)に終始し、根拠を出さない。

 

根拠を出してくれば、櫂はもっと、計算が楽だったはずであり、オープンな場で数字に基づいて議論できれば。そもそも戦争なんていう不合理な選択は出てこなかったはずである。今回の映画を観てまざまざと実感させられたのは、櫂のような数学の天才を持ってしても戦争は止められなかったし、ああ、現実の日本においてもこりゃまた戦争やるな、という諦観だった。

 

だからこそ、諦めてはいけん。明確にNOを言い続けないと、この国は、またやる。という現実を明らかにする、良い映画だった。やるじゃん、山崎さん。